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「はいっ、醤油やね! まいどおおきに!」


いつも世話になっている顔見知りの店で醤油を買い、重さに顔を歪めると隣からヒョイッと手が伸びてきた。


「ありがとうございます」

「……ふん」


普段は厳しい土方も、こういった時は矢央を女子扱いするのだ。

照れ臭いのか顔を反らし鼻を鳴らす土方は、ふいに視線を感じ振り返った。


それに気付いた矢央も振り返ってみたが、なんだ(?)と首を傾げた後、土方を見上げる。


「土方さん?」

「……気付かれたか」


屯所を出て暫くしてから、後をつけられている気配があった。

わざと気配に気付かせていたのか、ただ尾行が下手なのかは分からないが、先程まであった気配も土方が振り替えれば消えてしまい。


「山崎君」

「は!」


物陰に身を潜めていた山崎に「いたの!?」、と驚く矢央を捨て置き土方は気配があった方を見据えたまま


「後をつけろ」

「御意」


指示を下された山崎の気配も消え、土方はようやく前を向き歩き始めたので、慌てて矢央も歩き始める。


「…お前は、至る所から狙われているみてぇだな」

「え? 私がですか?」


醤油を買いに来たついでに安かった大根を手に入れ、大根を胸に抱えながら矢央はきょとんとする。


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