この想いを伝えて、彼女はきっと困惑している。

しかし、伝えずにはいられなかった。


最近は矢央を女性として意識する輩も増え、女性と知らなくても好意をよせる厄介な輩もいる。

きっとこの先、どんなに想っても己の恋が成就することはない。

結核という名の鎖に縛られ、未来に希望が持てない己では、矢央を愛することは出来ても、守り共に生きることは難しい。


「ゴホッ―…ゴホッゴホッ!」


歩きながら咳き込むと肺に痛みが走り、掌にわずかに血が浮かぶ。


「……はあ。 情けない。 誰にも負けない自信はあるのに、病には勝てないんですね」



――あの世で、貴方を待っている。


そう言って旅立って行ったお華と、その生まれ変わりの矢央、二人に恋をした沖田は

どちらも現世では叶うことはないのだと胸を痛めた。

血のついた口元を拭い、また月を見上げる。


「お華、私は彼女を命尽きるその時まで見守ろうと思います。 貴女の分まで……」



一風の風が、沖田の長い髪を揺らした。


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