弱点を指摘された矢央は大して気にはしていない。
もともと勝つために身に付けた能力ではなく、己の身を守るために身に付けた能力だ。
「やっぱり勝つための力って必要ですか?」
平成の世では守るための能力があれば十分だったが、幕末では違うと分かっている。
「そりゃあ、ねぇよりある方がいいわな。 けど……」
痛々しい姿をチラッと見た後、喉に熱い酒を流し込む。
「お前は女だ。 守る力があれば十分。 あとは野郎共の役目さ」
永倉にくしゃりと髪を撫でられ、ぐわんと視界が揺らぐ。
片目で永倉を見上げると、ほんのり頬を染めた永倉が楽しそうに笑っていた。
「永倉さんが優しいとなんか不気味です。 てか、なんか良いことでもあったんですか?」
「あ? お前失礼だな」
矢央に対して厳しい対応になる永倉にしては、今回は優しいことに若干違和感。
優しいことは有難いのだが、それでは永倉ではないような気がして少し物足りない。
矢央の言葉に対しても、いつもなら目くじら立てて怒るはずが、顔はにやけたままだった。
その疑問を解消したのは、永倉の相棒であり原田である。
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