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あの後、矢央は山崎の下へ運ばれ藤堂達は土方にこっぴどい説教を受けた。


『間島さん、本当にすみませんでした。 俺のこの悪い癖には、俺自身手を焼きます…』


医務室に運ばれる前、以前話した時のような穏やかで気弱そうな熊木に戻っていた。

何度も頭を下げられる中で、一体どちらが本当の熊木という人間かと困惑しながらも、素直に謝罪されてしまえば怒る理由がなくなってしまった矢央は


『私もムキになってごめんなさい』

と、謝るしかなかった。








「全治二週間ちゅうとこやな」

「ええっ、そんなに?」

「もう少し力が強かってみ、お前骨までいってもうてるで。 それで済んでええと思わんかい」


肩から胸にかけてと脇腹の打ち身が痣となり、腫れ上がってろくに身体の自由がきかない。

しかし骨には一切傷がないだけ、本当に良かったと思う。



「ンで、その男は大丈夫なんか?」

医療具を片付けながら、さっきの試合を語ってみると、山崎は渋い表情を見せていた。

ズキッと痛む脇腹をおさえながら身体を起こす。


「大丈夫…とは言いきれない。 嫌な予感がするんです」


胸騒ぎは一向におさまることはなかった。


「お前にしては珍しいのぉ。 ただの阿保かと思っとったらちゃうわけか」

「……山崎さんも土方さんも、失礼って言葉を知らないの?」

「お前に対してはない」


きっぱり言われると、案外すんなり受け入れられてしまうから不思議だ。

相手に悪気がないと分かっているからかもしれないが。


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