駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


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前川邸の庭で、正午過ぎ総長山南は、脱走により切腹を申し付けられた。


白装束に身を包んだ山南は、背後に立つ沖田を仰ぎ見ると申し訳なさそうに微笑んでみせる。


「すまないね、沖田君。 君に嫌な役ばかりさせてしまって」


山南は介錯役を沖田に頼んだ。
弟のように可愛がってきた沖田にだからこそ、その役を頼んだ。


「…貴方に関することで、私は一度も嫌だと思ったことはないですよ」

「…ありがとう」


山南を見下ろす瞳は、赤く充血していた。 沖田もまた、昨晩は一睡もしていないのだ。


二人のやり取りを黙って見ていた近藤は、バンッと一発畳を叩く。


「聞かせてくれ、山南。 どうして脱走などっ…」

「私は……」


今から切腹するというのに、見える空はどこまでも青く澄んでいた。

火照る頬を冷たい風が撫で、丁度良い熱冷ましとなった。


「君達が追い求めるような武士になれなかった。 否、なりたいと思うことを止めてしまった」



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