「自分が故障して、ま、辛い思いもして。そんなもん何十回と超えてプロになった親父の、すごさが身に染みたんだ。
今はサエない親父も、また立ち上がれるだろう、って。オレもびびってないで、ああだこうだ悩んでないで、まずはサッカー選手になろう。
経済的に厳しいのにチャンスをくれてる、親に感謝しようって思った」
そんな感じ、と言って、矢楚は照れたように笑った。
広香は、ただ胸打たれた。
小学生だったころ、私が矢楚に惹かれたのは、矢楚が、恵まれた中にいて才能もある、そういう、眩しい存在だったから。
でも今の矢楚は、違う。
違うけれど、同じに輝いている。


