「親父の人生にさ、サッカーが無くなったら、家族を養う金も、うまく稼げなくて。誇りを失った男ってさ……」 そこまで言って、矢楚は言葉を詰まらせた。 一瞬、広香は矢楚が泣いているのかと思った。 でも、違った。 遠くを見るその眼差しは静かだけれど強く、風に吹かれて孤独に立つ野生の動物を思わせた。寂しいけれど、逞しい、そんな姿だった。