「チーム練習に復帰したら、クラブに行くのがまた楽しくなったよ」 矢楚の脚の故障は、当初の医者の診断より一ヵ月早く回復した。自主トレばかりの、張り合いのない、焦りのつのる日々を抜け、ここ最近はサッカー漬けの毎日が過ごせていた。 「充実してる感じ、なんか、伝わる」 「オレはサッカーを愛してるんだな、って改めて解ったんだ。親にサッカーさせてもらえることに、感謝できるようにもなったしね」 矢楚がしんみりした口調で“感謝”と言ったのが、広香の耳に残った。 「前は、親に感謝してなかった?」