光の子





少し目を伏せて、矢楚は考え考え、話しだす。

街灯のあかりをうけて、長いまつ毛が目元に陰を落としている。



「広香、知ってる?
もし、月の引力がなかったら。
地球の自転はね、たった四時間で一周しちゃうんだって」



「ほんと?じゃ、一日がたったの四時間?」



「うん。
月の引力が、地球の自転を遅くしてくれてるんだって。
月の引力が力を与えてないと、地球の地軸すら不安定になるんだ。
ぐらぐらして、気候が不安定になるって」



矢楚はそこまで言うと、広香の手を握る手に力を込めた。
大きく息を吸うと、言いにくそうに、でも噛み砕くように話を続ける。



「で、さ。
俺はさ、四時間で一回転しゃう地球みたいなもんでね。
広香の傍にいると、
いやらしい欲望が湧いて悶々としてきちゃって。

暴走したくなるわけ」



「……うそ」



「ほんと」