「来てくれて、すごーく嬉しかったけど。
これからはね、こんな遅い時間に来たらだめだよ」
「うん」
「ね、広香」
「ん?」
「ゆっくり、付き合っていこう、俺たち。
こんなに早く出会っちゃったからさ。
ほら、もしこれが、ハタチとかで始まる恋ならさ」
広香の顔に熱がこもる。
恋――。
「ただゴールめざして、必死に走るだけでいいけど。
俺たち、まだ中学生だから。
焦ったら、ダメになっちゃう気がするんだ」
広香には、矢楚の言おうとしていることが、あまり良く分からなかった。
矢楚は、広香の表情でそれをわかったようだ。


