「お母さん。私、ちょっと出掛けていい?」 「もう夕飯の時間よ」 「お腹、減ってないの。九時までには帰るから」 「どこに行くの?」 「矢楚のサッカークラブ。バスに乗れば、20分で着くから。お願い」 「学校で会えるでしょ」 「でも明日は土ようだから。急ぎの話なの。お願い」 母は、しばし黙って広香を見つめていたが、少しだけ心配そうに眉根を寄せて言った。 「……、気を付けてね」 「ありがと!」 広香は、群青色の夜へ飛び出していった。