「矢楚は、イタリアで頑張って。
ファンタジスタになるんでしょ」
矢楚が首を振って何か言おうとしたのを、広香は遮って続けた。
「私がイタリアに行く」
広香は、噛みしめるようにもう一度言った。
「私がイタリアに行くよ」
「ダメだよ、せっかく新人賞を獲ったんだ。
講評でもこれからが楽しみな逸材だって。今が大事な時なんだよね」
「陶芸の道は、先が長いの。死ぬまで続けられる。どこの国でだって。
でも、サッカーは違う。
今しかできない。
最高峰の選手が集まる国は限られている。
だから、私が矢楚の処へ行くね。
それに、すごいの。師匠が今日ね、一本立ちしていいって言ってくださったの」
ホントに?矢楚は呆然と聞き返した。
その表情は幼い子どものようで、広香はたまらずに笑いだしていた。
笑ったまま、言った。
「矢楚、一緒にいよう。これからは、ずっと一緒に」


