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広場は、ほとんど変わらぬ姿で広香を迎えてくれた。
矢楚と別れた十五の春から、ここに足を踏み入れたことはなかった。
矢楚との思い出以外の何ものも、
この広場の記憶に交ぜたくなかった。
広香にとってここは、自分でさえ容易(たやす)く踏み入ることのできない、
魂の永遠の庭だったから。
甘く熟れた柿のように、夕日は西の地平線にぼたりと落っこちていた。
東の空には夜が訪れて、
その狭間にあって広場は、ひっそりと息を潜めている。
時は満ちた。
広香は、ふとそう思った。
そして、
青紫の空気の中、夜空を見上げる矢楚の後ろ姿を見つけた。


