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「ごめんね、広香」
授賞式を終えて、
木綿子が運転する車に乗っていた。
社用車だというこのハイブリッド車は、
普段木綿子に乗せてもらう愛車の軽自動車とは、乗り心地がまるで違う。
滑らかな氷の上を滑っているようだ。
「何度も謝らなくていいよ」
西日が眩しい。
「私も、矢楚に会うのは、広香と一緒で六年ぶりだったんだよ。
メールはね、頻繁に送っていたけど。……写真付きで」
木綿子は、また助手席の広香をちらりと見て、ごめんね、と申し訳なさそうに言った。
広香と会うたびに、木綿子は記念写真を撮った。
流行のブログでも立ち上げているかと思うほど、丁寧にカメラで記録していた。
広香の職場に見学に来たことも、工房の若手の飲み会に参加したこともあった。
広香の部屋に泊まったことも。
そのたびに写していた写真は、イタリアに住む、会社の稼ぎ頭に送っていたのだ。
それが、入社してからの二年あまり、木綿子の大事な仕事の一つだった、と。
木綿子は後ろめたそうだが、広香は腹は立たなかった。
木綿子の友情を疑うことなどあり得ない。


