胸の痛みから呼吸が少し乱れた。足も震えている。 広香はうつむいた。 これ以上、矢楚を見ないほうがいい。 いくら受賞者だからといえ、感極まりすぎている。 ほとばしる思いを、靴先を見つめることで広香は押し込めた。 そうしている間に、講評は終わった。 「 賞状と記念品が贈られます」 司会に促されて、広香は中央に進んだ。 受け取って一礼し、舞台を降りる。 もといた場所に戻りながら、広香は入り口を見た。 そこに矢楚の姿はなく、ハンカチを目頭にあてる木綿子だけが立っていた。