光の子





数回噛み締めるように頷き、記者は口を開く。



「大山(たいざん)先生に、昨日お話を伺ったのですが」



大山は、広香の師匠だ。



「工房にいらしたんですか」



「そうなんです。
今日はお忙しいそうで、受賞式に出席されたらすぐ帰られるとのことで。
締め切りの関係で、今日までには取材を終える必要があったもので」



広香は昨日の留守を謝った。



「作品を撮る必要があったので、月島さんは今日お会いするので良かったのです。

大山先生は、月島さんを近々、独立させるつもりだとおっしゃってましたが」



広香はもともと、庶民の生活に寄り添うような食器を作りたくて、陶工になった。


だが工房で作る食器は、伝統を正式に継承した、日本の宝のようなもので。


例えばご飯茶わん一つが三千円し、中でも師匠の銘をつけるほどの逸品ならば、その倍の値がついた。


人件費や作る手間を考えれば、それが利潤のでるギリギリの値段だった。



こうした価格は、いわば卸し値で、仲買人を通してデパートなどに並ぶと、さらに値は吊り上がるのだった。


そうなるともう、工房の品は庶民が普段使いできるものではなくなる。


広香は、葛藤した。