……………………………
地元紙の記者は、三十代半ばの気さくな女性だった。
インタビューも写真撮影も一人でこなす。
そばかすのある頬、笑うとなくなる目。
わずかな時間で人の心を開く。
『ひと、まち、文化』というコラムを担当しているそうで、そこに広香のインタビューを載せるのだという。
受賞式の会場で早めに待ち合わせをし、取材を受けていた。
「これが、受賞作品ですね。
遠めからもこのブルーに目を奪われました。美しいですね。
描かれた魚が躍動感と同時に、ゆったりと泳いでいるような印象も受けます」
ありがとうございます、と広香は静かに返事した。
コバルトブルーの釉薬(ゆうやく)に、削るように線描した、白い二匹の魚。
弧を描くように上下に魚を配置した、直径四十センチの大皿だ。
魚は伝統的な図柄で、魚文絵皿と呼ばれる。
「下の魚の方が少し大きいですね。
互いの尾を追って泳いでいるみたいです。
魚の胸にあるのは、なんですか」
「月です」
皿を食い入るように見ていた記者は、顔を上げて広香を見た。
表情が輝いている。
「月ですか。二匹の胸に。ロマンチックですね」
「蛇足か、とも迷ったんです。なので、まさか賞を頂けるとは、思いませんでした」


