ふっと笑って、広香をちらりと見ると、
「なんて、老婆心だわな」と、いつもの大らかな笑顔になった。
「響子さんは、なんでメキシコに渡ったんですか」
「英語が通じる、貧しい国だから」
そんな理由とは、思えない。
「信じてないね?
突き詰めればそうだよ。語学にかまける暇はなかったし。
だから英語が通じる国。
それに、持ってる貯金で、その国の芸大で陶芸学んでコネ作って、二年は生活して。
そう考えたら、アメリカやカナダはダメだし、オーストラリアさえ資金不足。
よって、メキシコになった。
アメリカに隣接してるから英語も通じる、物価も安い。
独自の文化とヨーロッパの植民地時代の文化、
それが融合されたメキシコに魅了された、とかナントカ、
個展のパンフに書いてるのは事実だけど、
真実には足りないわけさ」
にんまりと笑う。


