「結婚するってことは、子どもを生み育てることも、考えるからさ。
メキシコで軌道に乗り始めた矢先で、キャリアを中断したくなかった。
でっかいお腹抱えてできる仕事じゃないからね。
あと三年待ってよって、パートナーに返事して。
その間に子宮全摘出。
すったもんだして、私はパートナーを追い出した。
愛していたけど、そうした。それが、二年前」
気さくで飾らない、まるで裸で生きているような人だと思っていた。
しかし、人には見せぬ涙があった。
目の前の響子は、難破した船のようで広香の胸を突く。
「なんで、話してくれるんですか」
「ガールズトーク?」
響子は苦笑いした。
傷を開いて見せてまで、ですか。
「広香。
恋人は、ライバルじゃないよ。
顔を見ては対抗心燃やす、そういう相手じゃない。
同じ明日を、生きる人だ。
子を産んで育てたりも、いいもんなんだろねぇ……、きっと」


