「広香、見て」
矢楚の視線の先を広香も追う。
ためらい月が、道しるべのように海面に光の道をのせている。
波の揺らぎを、きらめきに変えながら。
「昨日は満月だったのに、雲に隠れてここは真っ暗だった。
月は満ちて、あそこにちゃんとあったんだ。
でも隠れて出てこなければ、ないのと同じ。
ためらいながらだっていいんだ。遅れたって。
姿を現してくれれば、ここはこんなに明るくて、歩むべき道も見えるよ」
打ち寄せる波のせいで、
矢楚の腕に抱かれたまま、月に向かって光の道を進んでいるような錯覚がおこる。
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