右の手のひらで矢楚は目を覆った。
「矢楚……、どうして隠すの。顔、見せて」
「だめ」
矢楚の鼻声に、広香は一層、胸が軋んだ。
「どうして」
「カッコ悪い」
矢楚はそう言うと背中を向けてしまった。
広香はそれでも回り込んで矢楚を見上げた。
「見たい、見せて。矢楚、見せて」
広香の声は涙で震えた。
せがまれて仕方なさそうに、矢楚は覆っていた手をどけた。
さりげなく涙を拭いながら。
長い睫毛だけが、わずかに濡れている。
広香は自分の頬を伝う涙には構わず、
手を伸ばし、矢楚の睫毛に触れた。
すると、矢楚の両目からぽとりぽとりと涙が落ちた。


