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広香が軽装に着替えてコテージの前庭に来たときには、矢楚はすでにそこで待っていた。
矢楚は夕食の時に着ていたトラッドな服のまま、
上に細身の赤いジップアップを羽織っている。
少し合っていない気もしたが、冷やすと故障の原因になると知也に言っていたことを思い出し、
自己管理のひとつだろうと広香は思った。
広香は、小花柄が愛らしいスウェット素材のタンクワンピース、その上に白いパーカーを羽織って、淡いブルーのジーンズを履いてきた。
それも、似合うね。
連れ立って歩きながら、矢楚はさらりと言う。
矢楚はどうして女性を褒めるのが上手なんだろう。
お姉さんの影響なのかな。
「今日、十六夜月らしいよ」
矢楚が低いところに輝く月を見てそう言った。
「どうして、そんなこと分かるの?」
「コテージのカレンダーにのってたよ。
干潮・満潮時間も記入されていた。
多分、海と深い暮らしをしてる沖縄では、大事な情報なんだね」


