矢楚は広香への熱望を押さえ、友達のラインからは出ないよう注意深く接した。 それは、広香をよく理解していたから。 広香の心にあるのは、矢楚への尊敬と信頼と清らかな親しみ。 たくましく、荒々しく、男へと変わりはじめた矢楚に、広香は追い付いていなかった。 そんなアンバランスな二人の前に、柴本亜希が現われたのだ。 亜希は、「少女」という子馬の集団から、さながらすっと抜きんでた一頭の美しい馬。 亜希はまっすぐに、その目に矢楚をとらえ、駈けてくるのだった。