夕食は、矢楚のコテージで、昼間漁港で買ったもずく丼のレトルトを使って簡単にすませた。
もずくが、昆布やめかぶ、細切れの人参や大豆と共に甘辛いタレにからめられていて、
広香たちはそれに昼の残りの刺身をのせて食べた。
「なんだか、ディナークルーズに比べると、切なくなるような晩メシだね」
矢楚がそう言って申し訳なさそうに眉を上げて微笑んだ。
中身もさることながら、食器もプラスチックの白い深皿で、
質素な最後の晩餐となった。
しかし、二人は、荷物の中では一番綺麗な服を選んで着ていた。
広香は、七十年代の女優が着ていたような、グレーのクラシカルなワンピースを。
詰まった襟とハイウェストのフレアーが上品で、
小さい作りの赤いカーディガンが華を添えていた。
高校の分散会用の服を前倒しで買うことで、旅に間に合わせたのだった。
矢楚は一目見るなり、ローマの休日のオードリーみたいだね、と褒めた。
矢楚は、紺のカーディガンにギンガムチェックのシャツを着ていた。
イギリスの大学生のような、かっちりした中にも愛らしさがあり、
くせのある髪や、日本人ばなれした顔立ちによく似合っていた。


