木綿子は、広香も一緒に行く?と聞いた。
「おっと、だ〜め〜。矢楚が一人になるだろが」
矢楚は人目につく場所には行けない。
ましてや、逃げ場のない船など。
「私、矢楚と残る」
木綿子が、いいの?と聞いた。
心配そうな、その顔。
二人をここに残せば、広香と矢楚は結論に向かって歩きだす。
矢楚のまだ知らない広香の気持ちを、木綿子はすでに知っている。
それが、矢楚にとって辛いものであることも。
視線を感じて、広香は知也を見た。
普段のふざけを払った、はっとするような力強い目をしている。
「なんだよ、暗い顔だな。ここに残って葬式でもするみたいじゃねぇか?」
知也は太ももに両肘を付き、少し前のめりに座りなおした。
広香を見据える。
「なんでも白黒つけるなよ。沖縄に来たからって、焦るなって。
卒業も就職も、関係ない。節目だからって、何もかもがはっきり見えるわけないんだよ。
なあ、広香。
約束はさ。
果たせる自信が100パーじゃなくても、していいんだ。俺はそう思うよ」


