うん、そう。
矢楚も、そう繰り返した。
そして二人、また黙って海を見ていた。
矢楚が、再び話しだす。
「あの日、広香が、オレの人生は続くんだ、って言ったよね。
どんなことにも、終わりがあって。
オレもサッカー選手でなくなる時がくる。
父さんはその先をうまく生きれなかったけど。
でもオレは、きっと、生き抜けると思う。
そう、思えるんだ」
うん。
広香はただ、そう言った。
波にかき消されかと思ったが、
矢楚は、うん、と噛み締めるように繰り返した。
「バケツ、持ってきたよ〜」
木綿子の元気な声がした。
矢楚は握った手に力を込めてから、そっと放した。


