「広香、矢楚に好きだって言わないの?」
「私が好きでいることは、矢楚は知ってる」
「でもこのままの状態だと、二人は離れてしまうよ」
「だけど、一緒にはいられない」
「どうして?」
広香は、フローリングの床を見つめてしばらく考えていた。
この気持ちを言葉にするのは難しい。
「今日、飛行機。雲の上を飛んでいたでしょ。きれいだったね。
矢楚の傍にいるのは、飛行機に乗ってるのに似てる。見たこともない高みにいけて、感動もいっぱいだけど。
すぐに地上に降りなきゃいけない。
私が生きるのは、そこだから」
「二人で飛び続ければいいのに」
「私は、そうやって飛んでいても、周りにある雲さえ掴めはしないの。
でも矢楚は、
雲よりずっと高いとこで輝く星にだってなれる。一番輝く星に。
一緒にいたら、私は自分が見えなくなるんだ。
私は地上で、自分の城を高く大きく作る。
それで、いつか、矢楚が私をまた見つけてくれたら」
「一緒に飛べそう?
自分のいるべき場所に、きちんと何かを作れていたら、根なし草にはならないもんね」
伝わった。
広香は木綿子を見た。
木綿子が広香の肩を抱いて、頭をこつんとくっつけた。
「せっかく、あんないい男が好きだって言ってるのに。
早く出会いすぎると、苦しむもんだね」


