「広香、陶芸家になるの?びっくりしたよ」
矢楚は穏やかにそう言った。
「陶芸家っていうよりは、陶工というイメージなの」
「違うの?」
「うん。芸術家というより、職人になるつもり。
生活雑器を、伝統的な製法で作る職人に」
へぇ、と、知也が食物でいっぱいの口で言った。
「大きな壺とか、オブジェとか作るんじゃないんだ」
「もちろん師匠が創るなら、お手伝いすることはあると思う。
少なくとも五年は修業期間だから、土を作ったりとか、下働きだから。
一人前になれたら、生活雑器を作る職人になりたいなって。
今のところは、そう思うの」
知也が、体力が不安だなあ、とつぶやいた。
それは、母にも言われたことだった。
ずばりと指摘されてわずかに黙り込んだ広香に、木綿子が明るい声で助け船を出す。
「だから、今、私と放課後走ってるんだよーん。ねー、広香」
「そうなの?広香、走ってるの?」
そう尋ねた矢楚にじっと見つめられて、広香は知らず瞬きが増える。
なんだろう。矢楚少し雰囲気が変わってる。


