「結局ね。
誰でもないんだよね。
つきつめたら、ひいおじいちゃんが生まれた日が、ドミノの最初の一枚なんだよ。
いつ、死ぬことが決まったかって、もうそれは生まれた日に決まってるんだから」
到底、矢楚には賛成できなかった。
「木綿子たちは、そうだろうと思うよ。その答えできっと正しい。
でも父さんの死は、そうじゃないんだ。
そんなふうには思えない、だって、オレには……責任があるんだよ」
「そりゃ、みんな、関わった人になんらかの責任を持ってるよ。
でもね、人間が死ぬことが決まっている以上、誰にも寿命がある。
死なせないことは、できないの。
その死に方が残念な形だったとして、仕方がないことなんだよ。
満足で幸せで、完璧に誰のせいでもない死に方なんて、そんなラッキー、めったに無いんだって」
「残念な死に方どころか、死んでって、私、命令したの。
そんなに苦しいなら、死んだらいいじゃない、死んでよって」
ぼそりと力なく亜希が言い、矢楚の全身に鳥肌が立った。
それでも木綿子は、しょうがないなぁというような顔で、亜希の頭を撫でた。
まるで小学生にするように。