月光と柴本亜希の魔力を一瞬で解いた木綿子は、
柔らかく微笑んだ。
「わたし、完全に、部外者なわけですけど。
ちょっと聞いてほしいんだ。
当事者同士で話してるとね、たまにエスカレートしちゃうことあるでしょ。
女子バスケやってた頃さ、女ばっかだからか、話し合いが泥沼化すること、多かったんだよね。
チアには男子メンバーがいるから、ミーティングとかの感じがちょっと違うんだ。
ま、ね、やっぱ、少し視点の違う人がいるほうが、いいこともあるんだな」
うん、噛みしめるように自分で頷いて、
木綿子はポケットからミニタオルを取り出し、亜希に渡した。
「何があったのか知らないけどね。
人が死ぬっていうことに、私なりの哲学があって。
だから、少し話させてくれる?」
ミニタオルを頬に当てる亜希に向って言うと、木綿子はくすりと笑った。
「うち、大家族なの。
弟妹が四人、それにお祖父ちゃんとお祖母ちゃんもいてさ。イマドキすごいでしょ。
おまけにね、私が小五の頃まで、ひいおじいちゃんも一緒に暮らしていたんだ」
「知らなかった」
広香が言った。
「うん。人に話すの初めて。
すっごく元気な八十六歳だったの。
それがお正月にね、私たちの目の前で、喉にお餅を詰まらせて死んでしまった」


