意を決するように鼻から息を吐き、
木綿子は亜希に歩み寄った。
スタスタと、それはなんとも自然で揺るぎない足取りだった。
「おいで」
亜希の手を取り、矢楚と広香のもとに連れてくる。
「立ち話もなんだし、あっちのベンチに座ろう。
こんな月光を浴びて立ってると、やっぱ少し変に雰囲気、出過ぎちゃうからさ」
そう言うと、木綿子は亜希を連れて中庭の端に設置されたベンチに向かった。
ベンチの背後にある校舎は、ちょうど一階が職員室で、灯りがこうこうと点いていた。
矢楚と広香も木綿子たちに続いた。
蛍光灯の明かりに照らされて木綿子の隣に腰掛けた亜希は、さっきまでの印象とはまるで違い、
美しくはあったが、うちひしがれ、
そして初めて、年相応の女の子に見えた。
「藤川選手は、立ってね」
残り座れるスペースは一人分だった。
広香が手招かれ、木綿子の隣に座った。


