光の子




艶やかに亜希が笑みを浮かべた。

それはまるで、月光を浴びて咲き綻ぶ大輪の花。




「矢楚。何にもわかってないね。
あなたは、お父さんを知らないの。

私は、私にしかできないことをしたの。
藤川サンの心を奪うにも、踏み躙るにも」



露をのせた花びらのように亜希の頬がきらめいた。


震える息を吐くたびに、とめどなく頬を涙が伝った。




「私は全てを与えた。愛されるために。
そうして今度は踏み躙ったの。藤川サンから逃れたかったから。
酷いまでに足蹴にした。夢中でやった。

矢楚には、できない。
愛されていた私にしか突き落とせない、深い穴があったの」



目をつぶり、少し天を仰ぐように亜希は言った。




「だから、殺したのは、私だよ」



天上の何者かへの告白のようだった。
神に対するようにも、矢楚の父に対するようにも見えた。

いや、あるいは、自分自身への告発だろうか。




矢楚は亜希の世界に飲み込まれた。
おそらくは、傍らの広香も。手で口を覆い、震えている。


それを打ち破る一つの声が背後から響いた。



「寿命だったの」



木綿子だった。



「よく分かんないけど、柴本さん、自分が矢楚のお父さんを殺したと思い込んでるんだね。
それに、矢楚も……。

二人とも、責任を感じているみたいだけど。
勘違いだと思うよ」