矢楚の背中で、木綿子が問い掛けた。
「柴本さん。
矢楚のお父さんは、自分で命を断ったんだよ」
矢楚は驚きに肩が強張った。
木綿子も父さんの自殺のこと知っていたのか。
知ってて知らぬふりをしていた。
さっきの和やかな語らいも、思いやりが生んだ幻に過ぎなかったんだ。
それは搾るような痛みを伴う気付きだった。
「私が、追い詰めて、お父さんを殺したんだよ、矢楚」
まがまがしい現実に引き戻すように、亜希は矢楚だけを見据えている。
不自然なほどに光る目。
まさか、涙……。
でも、ここからではよく見えない。
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