強い風になびく長い髪。
神話のなかの女神のようだ。
その姿には、矢楚の内にあった罪悪感を一気に覚醒させる力があった。
久方に矢楚を包んだ、穏やかさや和やかさ、とるに足りない平凡な学生の日常は、吹き飛ばされた。
亜希が口を開いた。
「ひたすら逃げていたわりには、学校に現れるなんて」
父が自殺してから、矢楚は亜希を避けていた。
ただ無心に。
「なし崩しにサヨナラできるわけがある?
私たち、お父さんを死なせた仲じゃない」
木綿子は横に立つ広香の顔を見た。
不穏な話の内容が掴めていないのだ。
しかしその視線を静かに受けた広香は、
何かを知っている。
その横顔を見て、矢楚はそう感じた。
二人を抜き去り、矢楚は亜希に歩みよろうとした。
「うーそ。私がやったのよ」
矢楚は歩みを止めた。
「私が、殺したの」
亜希の目がぎらりと光った。


