拭っても拭っても、涙は次々と頬を濡らした。
「自分が情けない。
私、お父さんの置土産のゴタゴタは何もかも自分が引き受けて、
みんなにはお父さんのお葬式、心置きなくさせてあげるつもりだったの。
それなのに、
葬儀が始まる前からこんなにいっぱいいっぱいになって、ぶちギレちゃって」
肩に掛けた大きめのトートバックが、重そうに食い込んでいる。
一泊分の荷物が入ったままなのだろう。
細い肩にかかる重圧が痛々しくて、荷物持つよ、と矢楚は言った。
沙与は素直にバックを預けると立ち止まった。
「早く落ち着かなきゃ。
私、遺体にまで罵倒しそう」


