キッチンから沙与がやってきて、矢楚におかえりと言った。
盆に載せたハーブティーの湯気から清涼感のある香りがした。
「ごめん、オレ、まだ美鈴は起きないかと思って」
投げ出して走りに出たことを弁解する矢楚に、
沙与はかすかにうなずいてお茶を運んでいった。
「食べる気がしないなら、せめてお茶でも飲んで」
そう言って沙与はテーブルにカップを置いた。
母は鼻をすすってありがとうと言ったが、
憔悴した美鈴はしくしくと泣くばかりだった。
「矢楚、お父さんはいつうちに帰るの」
沙与は表現に気を付けている。
矢楚もそれに倣った。
「葬儀屋が明日の午後、うちに連れ帰ってくれるよ」


