頭を振って起き上がった。 やめろ、引きずり込まれるな。 沙与の気丈な声を思い出せ。 オレたちは、母さんと美鈴を支えなくちゃいけない。 罪悪感、後悔、感傷、いかなる闇が心に広がろうと、目を逸らせ、耳をふさぐんだ。 そう、とにかく葬儀を終えるまでは。 少し走ってこよう。 そうだ、そのほうがいい。 美鈴は休日は午前を寝て過ごすことも多い。 一時間くらいは走れるだろう。 矢楚は部屋着のまま、家を飛び出した。