柴本亜希は全身に、淡く白い怒りを纏う。
広香の涙が、まるで彼女の誇りを傷つけたとでもいうように。
なんだろう、この違和感。
矢楚の父親に同情したのが、気にくわなかった?
もしかして……。
「柴本さん。
矢楚のお父さんのこと。とても好き、なんじゃない?」
「好きだったけど?それなりには」
瞬きもせずに、さらりと認めた。
「もうこの人でもいいかなって、思うこともあった。
だけど少しでも矢楚と話したら。
差は歴然でしょ。
やっぱり矢楚のほうがいい、薄暗くて冴えないオジサンより」
本心、だろうか。
答えを求めて、その艶(あで)やかな顔を見つめた。


