「だめだよ、そんなことを言ったら」 ぽつん、と、左目から涙が落ちて、広香は自分でも驚く。 泣くな。 脳を叱咤する。 柴本亜希に馬鹿にされてしまう。 広香は、膝に落ちた雫を手で押さえた。 「止めてよ」 うんざりした声。 涙に気付かれたかもしれない。 「あっちは、大人なの。 こども相手に不倫して、そのうえ狂った、情けない男でも。 大人の男なの」