落ち着かない。
腕時計を見る。そろそろ試合が始まる時間だ。
柴本亜希は、黙って広香を眺めている。楽しそうに。
試合に間に合わせる気はないようだ。
訳の解らない人。
自棄(やけ)になるなんてはじめてだけど。
広香は聞きずらいことを尋ねることにした。
答えてくれるような気がした。
「矢楚のお父さんと、何か、あるの?その…」
柴本亜希は、上半身をひねって左肘を背もたれに置き、体ごと広香のほうを向いた。
「付きまとわれてるの。
付き合ってたことがあって、まあ、もとに戻りたいって」
さらりと言った。
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