「広香ちゃん、今日はさー、お母さんに、これ、持っていってあげて。
口にあうか分かんないけど、蒸しケーキよ」




木綿子の母は、ふくよかな手でふろしきに包んだ蒸しケーキを広香に差し出した。

その外見に寛大で世話やきな人柄がにじんでいる。




「嬉しい……。ありがとう。お母さん、きっと喜ぶ」         



そう言った広香だが、木綿子の母には、
広香がこの店で買っている惣菜類や貰ったおすそわけが差し入れなどではないことなど、お見通しなのだろうと思った。




ただ広香の嘘に付き合って、広香が買う偏った食事に栄養が補えるよう、

たびたび手料理を広香に持ち帰らせくれている。