「目立たない場所だったけど、やっぱりモメてるとこを見た人が私以外にもいたみたいで。
たぶん、矢楚に教えたんだと思うの。
柴本亜希の腕を掴んでお父さんがどこかへ連れて行こうとしたとき、
矢楚が走ってきた」
「で、父子の戦い?」
木綿子は、かぶりを振った。
「矢楚が来たら、お父さんは柴本亜希を離して。
二人を残して帰って行った。
なんだかもう、その日は私なんかが矢楚に話を聞ける感じじゃなくて。
私もそのまま、クラブを出たんだ」
「変だな。息子の恋愛に口出すにしても、彼女を殴るなんて。
まるで柴本のほうの父親みたいじゃねぇか。
『あいつと別れろ』『いやよ!』バシッ、ってさ、
娘の親がやることだ」


