「私、矢楚のお父さんだって判ってから、試合の間ずっと様子を見ていたの。
矢楚のお父さん、たぶん、泣いていたと思う。
矢楚の試合観ながら。
それから、別の方も頻繁に見ていた。食い入るように。
お父さん、誰を見ていたと思う?
柴本亜希だったの。
あの子も試合の見学に来ていて。
私、矢楚のお父さんを見ているうちになんだか胸騒ぎがして。
試合終わってチアが解散した後も、サッカークラブに残ったの。
矢楚から話を聞くつもりでいた」
突然、チャイムが鳴った。
三人とも、ぎくりとして思わず黒板の上のスピーカーを眺める。
音が割れて耳障りだった。
テスト休みで静まり返った校舎に大きく鳴り響き、
開け放った窓からも音が入り込んだ。
三人はチャイムの音に囲いこまれた。
なぜか。
広香は、ここでの会話を咎められているように感じた。


