「そう。
その男の人、矢楚のお父さんだったの。
何人かが、そうだ、藤川だってつぶやいて。ざわつきだした。
元Jリーガーだし、サッカーに詳しい人には判ったみたい。
それに、矢楚は今やスター選手だから。
そのお父さんが、あんな姿で現われたら。ちょっと、ショッキングだった。
知也、何か、聞いてる?矢楚から」
顎を指でなぞりながら、当惑した様子で木綿子に答えた。
「親父がイカレた格好で試合に来たってことを?まさか。
矢楚が悩みや愚痴を漏らすことなんて、まず無いよ。
心の深いとこまでは見せないからな。
頭にくるけど、そういう奴だから、プロの世界でのしていけるんだと思うしね。
オレは、ほとんど、諦めてるんだ。
あいつん中に切り込むのは」
「そっか…。
あのね、変だったのは、それだけじゃないの」


