揺れるポニーテール。白いブラウスの背中を、広香は必死に追いかける。 廊下を走り、階段を駈け降りる。距離はひらくばかりだ。 「木綿子、速すぎる」 木綿子の走りには、バスケ部の時には無かった軽やかなリズムがある、と広香は思う。 高校で木綿子が選んだ部活は、チアリーダー部。 入部してまだ5ヵ月くらいだというのに、 体付きにも立ち居振る舞いにも、そこかしこにチアらしいキレの良さが覗く。 付いてこれない広香にかまわず全速力で走る木綿子は、目当ての人物を下駄箱で捕まえた。 「知也!」