すれ違いざまに、 その女子生徒の髪が、風にふわりと吹かれ、右の耳が見えた。 心の中を、風が吹き抜けていく。果実のような香気を広げて。 5メートルほど進んでから、矢楚は振り返った。 同時だった。彼女もまた、振り返ってこちらを見つめた。 それは、わずか3秒ほどだったが、魂には永遠の長さに思えた。 そして同時に、二人は前を向いた。 さよなら。 広香。 矢楚は、再び駆け出した。