父は靴箱を開けて靴を選びながら言った。
「公式戦で、数分でもピッチに立てば、お前は高校生Jリーガーとしてニュースを飾る」
選んだ靴を玄関に置いて足を入れると、
父は矢楚を眺めた。
「準備、できてるのか」
準備、って…。
茫然とする矢楚の顔を父はしばらく見つめていた。
矢楚は父が何か知恵を与えてくれるのではないかと期待して待った。
しかし父は、何も言わずに矢楚に背を向けると、ドアに手をかけた。
扉の閉まる無機質な音が、冷たく響く。
矢楚は、目を閉じて壁にもたれた。
オレのことなんか、どうでもいいってことか。


