あいつさ、オレと同い年なんだ。
親父、知ってて付き合ってるんだよね?
しかし、実際に口から出たのは別のことだった。
「オレ、ブィットリアに帯同されることになった」
振り返った父は、わずかに目を見開いていた。
「そうか」
「うん…。仕上がり次第だけど、Jリーグの公式戦に出るかもしれない。
…FW(フォワード)で」
FW、と言ったとき、父の眉が少し動いた。
MF(ミッドフィルダー)だった父に憧れて、
サッカーをはじめた頃から矢楚のポジションはMFだった。
いま、別の道を歩きだしたのだ。
二人の間に、それまでの時間が風のように吹き抜けていく。
小学校の低学年までは、この廊下で、サッカーニュースで観たスーパープレーを父と再現した。
壁が壊れると母に怒られながら。


