父は壁の時計をチラリと見ると、リモコンを手に取りテレビを消した。
リビングが静まりかえる。
「ただいま」
後方から矢楚が声をかけると、父はぎこちなく少し腰を浮かせ、それから立ち上がった。
部屋着ではなかった。
ごつい腕時計が、蛍光灯の明かりをキラリと受けている。
父は矢楚に、あぁ、とだけ言うと、ソファーの肘掛にかけていたブルゾンをとった。
出掛ける前の、時間つぶしだったのか。
柴本亜希に会うのだろうか。
タンガリーシャツが若々しい。
華やかな顔立ちの父には少し淡すぎる色合いだが、悪くはない。
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