広香は、矢楚の愛情そのもののような温かいはちみつレモンを、辛い気持ちで飲み続けた。
話すことは決めているけど、切り出すタイミングがわからない。
ゆったり飲みながらできる話ではない。
とにかく早く飲み干そうと急いでカップを傾けた。
やがて飲み終えてカップを下に置くと、
待っていたかのように、首元にさらりと冷たい感触がした。
驚いて手で触れると、指先に細いネックレスの感触。
見ると、ピンクゴールドのチェーンに一粒の淡く濁った白色の石がついた、プチネックレスがかかっていた。
茫然とする広香に、背中から矢楚の柔らかな声が響いた。
「雑貨屋で買ったんだ、だからすごく安いんだけど。
これ、ムーンストーンっていう石だって。
覚えてるかな、付き合い始めた夜に、オレが月の話をしたの。
それに、広香の名字は月島だから。
ぴったりかな、と思って」
そこまで言うと、矢楚は再び隣に移動し、似合うね、と微笑んだ。
「この前の引退試合のときさ、広香が先に帰ったとき。木綿子と知也に、少し、聞いた」
広香は目をあげて、矢楚を見た。


